乳がんとは
乳がんとは、乳腺にできる悪性腫瘍です。近年では、日本人女性の罹患者数が増加しています。
40~60代の女性に多く見られ、進行すると、脇の下のリンパ節や血流に乗って、肺や骨、肝臓などに転移することもあります。
部位別がん羅漢数
年齢階級別罹患率
年齢階級別死亡率
※国立研究開発法人国立がん研究センター統計
乳がんの症状
初期のうちは痛みをほとんど感じませんが、乳房のしこりやただれ、乳頭から分泌物が出る、左右の乳房の大きさが異なるといった症状が現れることがあります。
ある程度進行すると、がん細胞の増殖や潰瘍、骨・リンパ節への転移などによって、痛みが現れることもあります。また、手術・治療後も、痛みや浮腫が残ることもあります。
乳がんに「痛み」は
ほとんどない
乳がんを発症したからといって、痛むことは滅多にありません。「痛みを感じるから乳がんかな?」と思う方もいますが、それは大抵間違いです。
乳房が痛むのは、生理前などによるホルモンバランスの変化によって起こるケースが多いとされています。
ただ、乳房にしこりがあったり乳頭から血が出たりした際は、当院へご相談ください。
乳がんは初期症状に
乏しい
乳がんの初期症状としては、乳房を触った時に「しこり」が確認できることが一番多いとされています。他にも、乳房のへこみやただれ、乳房の大きさが左右それぞれ違う、乳頭から分泌液が出るなどの症状が起こることがあります。
また乳がんのしこりは、セルフチェックで発見できることもあります。
しこり以外の症状
乳頭の腫れ・ただれ
(びらん)
これは皮膚炎の場合もありますが、「パジェット病」という乳がんの一種である可能性も考えられます。
皮膚の潰瘍
乳がん細胞の増殖によって、乳房の表面に潰瘍ができ、出血を起こすこともあります。細菌に感染することで、臭いがきつくなることもあります。
形の異常
乳がんができた乳房は、できていない乳房よりも大きくなることもあります。
また、ひきつれや凹みが起きることもあります。
皮膚の色の変化
乳房の皮膚の色が赤くなる場合は、「炎症性乳がん」の可能性があります。特に片方の乳房だけに見られる際は、注意しましょう。
乳がんのしこり
胸のしこりを押すと
痛いのは?
押すと痛む、痛みを伴わない、触ると動く(または動かない)、ザラザラしている、つるつるしているなど、特徴は1人ひとり異なるかと思います。
しかし、これだけで乳がんかどうかを見極めることはできませんので、マンモグラフィや超音波検査(エコー)などを行う必要があります。
乳がんのしこりは
どこにできる?
胸のしこりが一番多く見られるのは、乳頭から見て外側の上の方です。50%くらいのしこりは、この部分にできます。
他にも、上部の内側や下部の外側、内側などにできることがあります。
どんな感触?特徴は?
乳がんのしこりは、触ってみると硬くゴツゴツとしており、触っても動きにくいことが多いです。
一方、良性の乳腺腫瘍は、比較的柔らかくて、指で押すと動く特徴をしています。
また、女性ホルモンの影響で、生理周期によって乳房が張ったり、しこりや痛みを感じたりすることもあります。
胸のしこりが悪性の
乳がんである確率は?
乳がんと診断されるのは、しこりの10~20%程度です。
しかし、しこりを見つけた際は、早めに受診することをおすすめします。
乳がんの原因は
ストレス?
乳がんは、遺伝や女性ホルモンなどが影響して起こります。
遺伝
乳がんの5~10%が遺伝によるものです。遺伝性乳がんの50%以上は、「BRCA」という遺伝子に変異があると言われており、この遺伝子によって乳がん・卵巣がんのリスクが高い性質を持っている状態を「HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)」と呼びます。
実際にHBOCの方が70歳までに乳がんにかかるリスクは50~60%、卵巣がんのリスクは20~40%と報告されています。
女性ホルモン
(エストロゲン)の影響
エストロゲンには乳がん細胞の増殖を促す作用があります。そのためエストロゲンの濃度や経口避妊薬の服用、ホルモン補充療法などによって、発症リスクが高まると指摘されています。
乳がんになりやすい人は
どんな人?
乳がんのリスクが高いとされている方は、次のような方です。
- 生理が早く始まった方
(11歳より前) - 生理が遅く終わった方
(55歳より後) - 子どもを産んでいない方や、
初めて産んだのが30歳を過ぎた方
治療方法
手術療法
乳房と、脇の下のリンパ節の手術を行います。乳がんを切除する方法には、乳房を部分的に切除する方法と乳房全てを切除する方法があります。
なお、乳がんが腋窩リンパ節にまで転移しているかを調べるために、センチネルリンパ節生検を行い、転移している場合は、追加で腋窩リンパ節郭清も実施されます。
放射線治療
乳がん細胞に当てることで、増殖を抑えながらがん細胞の死滅を促します。放射線治療は約1ヶ月間、毎日通院して受けることが多いです。また、放射線治療には副作用が伴うため、過去に治療した部位に再度当てることはできません。
薬物療法
乳がん細胞の増殖スピードを遅くし、再発を抑えたり、転移乳がんを治療するために行います。
主に、抗がん剤や分子標的薬、ホルモン薬などを処方します。