陥没乳頭とは
陥没乳頭とは、乳頭が乳輪の内側に埋まってしまっている状態です。
「見た目が気になる」と悩む方もいらっしゃるかもしれませんが、「妊娠しても乳頭が突出しないので母乳が出にくくなる」という重大なトラブルの元にもなります。
さらに母乳が出にくくなると、乳房が張って痛くなったり、赤ちゃんがおっぱいを吸いにくくなったりするトラブルも起こり得ます。
陥没乳頭を治す方法には、吸引器を使って乳頭を引き出す方法や、手術で乳頭を出す方法があります。
仮性陥没乳頭
乳頭が内側に隠れているが、手で引っ張ったり刺激したりすると出てくるものです。刺激を加えないとすぐにまた内側に凹んでしまいます。
真性陥没乳頭
乳頭が乳輪の内側に埋まっていて、どう対処しても出てこない状態です。
陥没乳頭の原因
母乳を作る乳腺や、母乳を通す乳管の発育が不十分だったり、線維のような組織が短縮して乳頭を下へ引っ張ったりすることで起こります。生まれつきの場合もあれば、思春期や二次性徴後に起こるケースもあります。さらに、乳房のたるみや打撲による脂肪壊死、乳腺炎、乳がん、急激な体重減少、乳房への外科的処置によって起こることもあります。
乳がんなどの悪性腫瘍によって陥没乳頭の場合は、乳管に悪性細胞が浸潤することで発生します。しかし、乳頭分泌や乳頭びらん、乳房のしこりを起こしているケースが多く、このような場合は、乳頭を出す手術を受けることはできませんし、乳がんの見逃しに繋がるリスクも伴います。
また、乳腺炎を発症した後の瘢痕(はんこん)や打撲による脂肪壊死などで、乳房が硬くなることもあります。これは悪性腫瘍のしこりとよく似ていますが、この場合乳頭分泌を伴うケースはそう多くありません。
陥没乳頭に
なりやすい人は?
- ご家族の中に陥没乳頭の方がいる
- 乳腺炎を発症した方
など
陥没乳頭だったら
どんな問題が起こるの?
陥没乳頭には、次のような問題があります。
- 授乳しづらい
- 乳首に細菌が溜まり、乳腺炎のリスクが高くなる
- 乳首の形にコンプレックスを感じる
陥没乳頭の治療方法
保存的方法
乳頭を吸引する器具を使って治す方法が行われます。この方法は、3ヵ月~2年ほど続けないと効果が実感できない可能性もあります。
ただし、妊娠している方がこれらの治療を受けると、乳頭を刺激するため、子宮が収縮して早産や流産のリスクが高まる恐れがあります。特に、妊娠9~10ヵ月の時期にいる場合、この方法は適用されません。
観血的治療
乳管の周りにあるひきつれを剥がしたり、乳頭に切れ目を入れたりして乳頭を出す方法があります。ただし、授乳を行う可能性がある場合は、乳管を傷つけないように注意しながら行う必要があるので、時間がかかったり乳頭が完全に出ないこともあります。
授乳をする可能性が低い場合は、乳管の周囲にある原因組織を乳管ごと切る方法を選択します。この方法で行う手術は短時間で行えますし、乳頭がきれいに出ることが多いです。
ただし残念なことに、これらの手術を受けても再発してしまう可能性があります。その場合は、もう一度手術をすることになります。
陥没乳頭の手術は
保険適用になる?
今後授乳する予定がある患者様や、陥没乳頭が乳輪下膿瘍の原因になっていると考えられる場合は、保険適用の対象です。
手術が必要な場合には、連携病院をご紹介します。
治療を控えた方がよい方
マッサージで改善する方
乳頭を乳輪の中心に向けて押し出すように揉むと突出させることができ、かつそのままの状態が保てる場合は、市販の搾乳器で治療することが可能です。搾乳機は1日に数回、10〜15分ずつ、乳頭に搾乳器を当てて吸引して使いましょう。
しかし、マッサージを行っても乳頭が出ない場合や、乳腺炎が何度も起こっている場合は、手術を検討します。
成長途中の思春期の方
乳房が成長途中の約14歳〜15歳の方は、手術を受けた後に乳房が変化したり、また乳頭が陥没してしまう可能性があります。そのため、手術は乳房の発達が完了した後に受けることをお勧めします。
妊娠中の方
手術は、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼさない期間に受けることが可能です。ただし手術を受けるには、産科の担当医とこまめに連携しなくてはなりません。さらに、手術後には乳管が狭窄して、乳腺炎になるリスクが高くなります。そのため妊娠中の方に対して、授乳期間が終わるまで手術を受けないよう案内されることが多いです。